雨の朝、高野山にて/渡邉建志
 
悟りを開かんと高野山へ赴くも、悟りを開くにはイージーすぎる気負いと、その程度の気負いでは三昧境を感ずることもできぬほど開発されきった環境(観光バスがブンブン走っており、徒歩で参拝している僕はどんな都会でも浴びたことのないほどの排気ガスを吸い込んだ)のため、僕はまったく鬱々とした気分であった。ユースホステルに予約は入れてあったが、泊まらずに帰りたい気分だった。たどり着いたユースホステルの談話室にはドイツ人のヘニングくん(21歳、次の行き先は四国、お遍路一人旅)を囲んで3人の女の子が英語で話しかけていた。将棋盤があったので、将棋できる人いますか、と聞いたら、ひとり女の子ができるといって、僕らは2局打っ
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