ながもの /服部 剛
陽は沈み
旅人ゆえに泊まってゆく僕の他は
皆帰るので玄関で見送り手をふった
翌朝目覚めて階段を下り
「 おはようさん 」と昨日の部屋に入ると
隅っこには昨日買ったままの姿で横たわる
かなしげな( 大黒棒 )
「 ありゃりゃ・・・
これぞぶざまなながものだ 」
「 それを言うなら
無用の長物でしょ 」
と突っこまれて苦笑い
帰りの荷物になるので
腹も減ってないのに仕方なく
友達夫婦と僕で3っつに折って
もぐもぐと黙って頬をふくらます
*
今、僕は山の中を縫うように
東京へと続く線路をぐんぐん加速する
特急レッドアロー号の窓際に肘をつき
いつのまにやら
秩父の山間に沈む夕陽に
目を細める
隣の空席にたたんだ
ジャンパーのポケットから
ビニールに包まれた
こぶし大の( 大黒棒 )が
ひょっこり顔を出している
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