心臓と銀杏/木屋 亞万
ている
つまりは胃腸が弱いらしい
消化不良の銀杏の実がつぶれて
水に流せない排泄物の香りがする
医者は慢性膵炎と診断したが
原因はよくわかっていないという
檸檬イエローが見たいと
病床で胃腸が呟いたので
銀杏はあんなにも鮮やかに黄色いのだと
心臓が教えてくれた
紅葉を狩りに行くということは
体内に潜り込むことなのだと
山の鮮血に囲まれて気付いた
血液は酸素を含むとこんなにも紅く
発色するのかと驚いていると
心臓は苦笑してこう答えた
血液は誰もいないのに流れることがあります
それが秋の終わりであり
冬の始まりなのです
心臓は仕事をなくし、あまりに暇なので
毛羽立っては、枯れていくのです
それは、愛に似ています
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