手遅れの迷いが映し出すものは/ホロウ・シカエルボク
横たわる過去に手を添えながら眠った
まだあどけなさの残る女の汚れた横顔
真っ直ぐに純粋を求め過ぎてしまって
気づいた時には取り戻せないほどの傷みを背負っていた
溢れるほどの愛に彩られていたはずの
明かりを落としたワンルームの哀しさはどうして
手を伸ばせばすぐそこにあったはずの
穏やかさと力強さの同居した
神々しいほどの温もりの不在はどうして
気まぐれで買った名前も知らない魚を生かせるための
エアーポンプが水槽の端で静かに呼吸している
うんざりするほどの疲れが連れてくるまどろみで
(あんな風に循環することが出来ればよかった)と女はひとりごちる
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