伸びよ蘖/餅月兎
 
せたいから
かっこいい男でありたいから
振り向かずアクセルを踏む

例えば
黒い髪と大きな前歯が可愛いあなたの名
あなたに恥じない男になりたいという気持ちが
怠け者の僕を今日も鍛えている

例えば
僕を怒鳴りつけてばかりだった口元を
遺影の中では綻ばせているあなたの名
いつかあなたに褒められたくて
昨日と違う気持ちで仕事に向き合ってみる

あなたは夢
夢はあした
あしたは僕
僕は蘖
蘖のあした
あしたのあしたのあしたの…

無数の僕のため君のためあなたのため
それらは複雑に絡み合い
これから来る長い冬を越え
やがて根雪に降り注ぐ春の陽に
暖かく溶け合ってゆくのだろう

そしてまた
田植えの季節がやってきて…

夢よ
あなたに恥じぬように今日を生きる
                2008.11.30

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