覇王紀/《81》柴田望
むかしむかし
ある大金持ちが
貧しい友人の服の裾に
一生暮らしていけるだけの
高価な珠を縫い付けてやったが
友人はそれに気づかず
一生貧しいままであったという
水のタレスは貧しいため
哲学など役に立たぬと笑われた
そこで星の知識を使い
オリーヴの豊作を読む
キオスとミレトスじゅうの
圧搾機の使用権を安値でおさえ
大豊作の収穫期に
高値で貸しだし大儲けした
哲学者はお望みとあれば金持ちになれるが
哲学者の野心はそれ以外にあることを
証明したのだ
「ボルタの電堆」アセトンと同じ危険性は
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