夜の椅子/いねむり猫
箱の不ぞろいな列にまぎれて座っている男と目が合う
ここはおれの場所だ と 力のない咳が訴える
街は 低く咽び泣いている
無数の空調装置が排気する 何度もリサイクルされた呼気が
破れかけた配管を共鳴させる
笑い声がする 楽しそうではない笑い声が むしろ怒りを含んだ笑い声が
猫は ただ 黙って 光る目を私に向けている
出会うすべてが 私をしりぞけ 私の背後を見つめている
それでいてこの街は 私がいる場所を静かに指差す
硬く 狭く 安定の悪い 私の座るべき椅子
私はいつも その店の その椅子に座って 夜が過ぎていくのをながめている
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