ゆるやかな直線/霜天
ふおーん
警笛を置き去りにして
カーブに消えていく電車
踏切では遮断機が開くことを忘れて
取り残された人々
遠くでもう一度
ふおーん
ここはゆるやかに傾斜している世の中なので
くすぶって
昇れない太陽を
向日葵の首の角度で見つめている
ビルは大きな影になって
僕等を遮ってしまう
ふおーん
呼ぶような、呼ぶような
開かない遮断機の刻んでいくリズムを
聞きたくないのに聞いてしまう
僕等は遮られているんだって
忘れているのですか
ゆるやかな直線の内側で
静かに回転している
少しずつの傾斜に
気付けないのは
僕等
いつか、空で
見逃した虹の曲線を
なぞるように
ゆるやかに
傾斜する
世界で
ただ、たたずむ
遮られて
動かない僕等を
遠くから
呼び掛ける
ふおーん
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