狩人/ふるる
 
澄みわたった
早朝の森に
狩人の目をした
男が一人

男は言葉で狩るのだが
甘い言葉で狩れるのは小物ばかり

純情な小鹿や
可愛そうなリス
ひきこもりの小鳥など

男は言葉で狩るのだが
鋭い言葉ほど諸刃の刃
うっかりすると自らに

男の右腕が動かないのは
そのためだ

かつて
巨きな母熊を狩ろうと
ある言葉を発し
母熊は仔熊を失い
男は右腕を

再び合間見えたとき
怒り猛った母熊に
自分は殺されるだろう
ひどく
残酷な言葉を
彼女は万も知っているから

それまでは
甘い言葉で小物を狩る

澄みわたった早朝の森

動かない右腕

背後に母熊の影


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