回雪の彼方/木屋 亞万
 
肩甲骨を背中で閉じて胸を大きく開いたら
幸せな蒸気を肋骨の間に詰め込んで
淋しさが背中に滴る前に
あの人の元へ急がなくては
走る背中を丸めたら翼が広がってしまうので
人ごみでは邪魔になる
仕方なく駅前ターミナルから羽ばたく
羽の根元に力を入れて
背中が裂けそうなくらい
筋肉を弾ませて離陸
浮上したときについつい胸が開いてしまって
奇跡を詰め込んだ贈り物は
街に回雪として降って消える

幸せの情熱はもう南の方へ走り出している
今更戻っても追いつけないだろう
かといって人の蒸気を奪い取るほど
悪くなることなんてできはしない
もう幸せは取り戻せない

足の裏から少
[次のページ]
戻る   Point(0)