気配/いねむり猫
気配を感じて
うなじの毛が立ち上がる
背後を探る 自分が持っているはずもない感覚を指し伸ばして
気配は やってくるのを待つしかない
訪れは 待っていないと やってこない
でも 正面から待ち構えると 見逃してしまうし すり抜けてしまう
目を閉じて 耳を澄ませている方が 少しはましかな
それとも 深夜に訳もなく目覚めた時の 半透明のまぶたの中で会えるかも
気配はもう去ったみたいだ
捕まえそこなったな
でも ほんのときどき 私を訪れてくれる
その訪問者たちと 過ごす とても不思議な迷走
はるかな距離を彷徨う旅は 路地裏から家の台所までのわずかな数歩
私たちは一緒に溶け合って 輝く時間の川になり 街灯の周りに渦を巻く
行き交う人たちのほほをなで 枯葉たちの中でつかの間を眠り 霧雨の中で目覚める
訪れは ただ待っていれば良いのに
それでも 待ちきれなくて あたりの気配を探ってしまう
まるで クリスマスの夜を何度も数えて待つように
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