暴力と責任、若しくは<善悪の彼岸>−「存在の彼方へ」を読んでみる11/もぐもぐ
 
からの意思で善良な者が誰一人いないのと同様に、<善>の奴隷も誰一人としていないのである」(どちらもp41)

「主体性には<善>を選ぶために必要な時間的猶予が与えられていない」。主体は、<善>(これが何なのかは一旦措いておく)を選択することについて、判断するための時間を与えられていない。これは上の、予告なしの神の威力に似ている。ある者は予告なしに打ち倒され、ある者は予告なしに服従する。神の圧倒的な威力は、それを受け入れる者に、あれこれと考える時間的余裕を全く与えない。命令が下される以前に既に服従しているか、それとも打ち倒されているかである。

余りにも巨大な威力が到来する危険を察知したとき
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