「空の字をじっと見てみて」「うん、みたよ」「パンダの顔に見えないかしら?」/木屋 亞万
のなかで熱せられて
爆発しそうだったんだ
そして僕が4年生のとき
近くに住む5つ上の姉さんのスカートをめくったときだった
姉さんは僕に聞いたんだ
「どうしてこんなことをするの、恥ずかしくないの」って
僕は自慢げに「僕の中身は空っぽだから何をしても平気なのだ!」って言ってやった
そしたら姉さん、ムスッとした顔で、近くにあった木の枝を拾い上げて
地面に『空』という字を書いた
「空の字をじっと見てみて」って自信ありげに言う
「うん、みたよ」と言いながらその自信に少しひるむ
「パンダの顔に見えないかしら?」と得意げに微笑む
「何だよ、バカみたい」と思ったまま口にしたら
突然、姉さんに思い切り抱きしめられた
「誰かにこうして欲しかったんでしょ」と姉さんが笑う
紺色のセーターの編み目が眼の前にたくさんあって、すごく温かかった
爆発しそうだったガスが、両腕の圧力でプシューって抜けたような気がした
今でも僕の中身は空っぽでパンパンだけど
それは愛らしい熊の、パンダの顔をしている
姉さんの温もりをじんわり漂わせて
照れくさそうに笑っているんだ
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