ここで回るよ、一回だけ/猫のひたい撫でるたま子
 
君ならわかる

でもあの子なら分からないよ


覗いてごらん あの穴を

空気が吸い込まれていく皺くちゃになった言葉の紙を

いなくなった人たちの面影をすくったスプーンを


時間じゃないよ

言葉じゃないよ

何年後じゃないよ

何年後なんて君にはないよ


世界に置いてかれて

それでも世界の端っこを齧って

口から出した言葉はカラッポ

それでいいんだ

どこにも行かない

変わらないで二人こうしているだけで


それでも世界は勝手に回るよ

愛してるよ、忘れたくないよ

覚えていられるだろうか知ってるだけの君の全てを


クリスマスがきたよ

去年なくしたあのマフラーを巻こう


何もかもがここにはあるね

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