はちみつ/キキ
ゆけるもの
さあ、くちびるを開けて、ハニー
歯のすきまから
あふれる黄金の言葉は
全部そんな歌だ
どんなに泣いてみても
眠るためだけの夜なんてどこにもない
後れ毛が湿って
物語はここから始まるのか
終わるのか
知らないひとの肩越しに光る
ビルのはざまで
わたしは指で影絵をつくってみせる
夜の樹はいつまでも葉をつけなくて
このままでは髪だけがうんと伸びてしまうね
そしたらこっちとあっちを結んでしまおうね
と
笑いあう
昨日までのわたしたちは
みじかい舌先にはちみつをのせてた
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