カノン/霊屋 岬
メイドが男を撫でる度、男は見る見る発酵していった…
メイドは無心で塵を食べている
眼から溢れ出てくる蜂蜜のような塵が
「自分は羊水だ」と言ったり
「金糸雀だ」と言ったりしている
男は眼を見開きながら
在りし日の、在りし日の営みを
ただ、思い返している
(カノンは繰り返される
思い続ける男の
思い続ける男の
思い続ける男の
夜は途轍もなく
深く
何処までも出口は
無く
メイドは蜜を固めて
それを舐めて
鳥籠に入ろうとしている
(カノンは繰り返されている…
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