カノン/霊屋 岬
 




相変わらず欠けた物を偏愛しながら男は眼を掻き毟り続けていた
ペストについての書物を読み
 



  (どこかが違ったカノンを口ずさみ





男は手に鳥籠を持ち
昔飛んでいってしまった金糸雀に思いを馳せている様子





義手のメイドは男の乳房を男のするように愛撫してやりながら
男の眼の塵を食べてやっていた
それは苺のような味をしていたり葡萄のような味をしている事もあった
 



  (カノンは狂っている





昼夜の区別は此処にはなく
ただあるがまま日は過ぎたり戻ったりしていた




メイ
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