ひよこ豆/望月 ゆき
 
「あれだけは、あたし大嫌いだから。」
ヨシ君のお母さんはダイニングで
ひよこ豆をクチャクチャやりながら
ぐにゃりと頬をゆがめた
さっきからの話の流れだと
茶飲み話の主役は蚊のようだ
あれはね、ホントあたし嫌いなのよ
パチンと両手でつぶして、
それで終わりじゃあ、ないのよ
親指と人差し指ではさんで持って
足を一本ずつ抜いてやるの
それからゴミ箱に捨てるのよ、
あたしホント大嫌いだから
ぼくとヨシ君は背を向けて
コントローラーをにぎる
両手の親指を機敏に狭い範囲で行き来させる
ライフはあと3つ
「大嫌いといえばあたしはアレね。」
2軒隣の坂口さんのおばさんはたたみか
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