夕暮れの影/松本 卓也
 
冷たさが空を行き交い
街路樹震える夕暮れに
一つ伸びた影を踏みつけながら
辿る家路はいつも寂しい

今日もまた自分を蔑みながら
紛らわした孤独に積み重ねた後悔を
一杯の冷酒で紛らわした帰り道

人気の無い坂道から
冷え込んだ部屋に舞い戻るまで
誰にも聞こえないような独り言
零れるがままにして

家々から漏れる灯り
子供らの笑い声
暖かな香りが纏わりついて

図体だけは人並にでかい影
今にも掻き消えそうな
弱弱しくちっぽけな主張
繰り返すくらいなら

いっそ無くなってしまえばいいのに



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