01:ふたりぼっち/chick
朝日がまぶしい窓際でタクミを撫でるのが毎朝の日課だった。
「久美ちゃん、もう、八時」
後ろから男の声が聞こえて、タクミは私の手をすり抜けてベッドの中にもぐりこんだ。茶色い背中を見送った後で、思わず声の主を睨みつける。
「仕事、行かないと。いつまでも猫を撫でてる場合じゃない」
広樹はそう言っていつまでも窓際から離れない私の頭を触れるように撫でた。
もう、八時。かれこれ二時間近くタクミを撫で続けていたらしい。ふわふわとした感触が手のひらに残ったままだった。
金曜日の夜から土曜日の朝にかけてだけ、広樹は私のものになる。土曜日は少しだけ朝が遅い。それは私が無能的な意味で早朝出勤する必
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