むーみん/佐野権太
ねぇ、その懐かしい谷は
いまも風に吹かれているの
そうさ
陽のあたる白いテラスで
あるいは
小さな木の橋に腰かけて
風に吹かれてる
何も変わらない
(かば?
(かばじゃないよ、妖精だよ
(足のひらが
(ぽゆん、ぽゆん、って鳴るんだ
争いは好まない
何よりも自由を愛し
茫洋とした瞳で直立する種族だ
小さな暖炉ではパンケーキが焼かれる
赤く照らされた食卓には
大きなマグカップと
それぞれの皿が準備されている
誰もがその椅子に座ることができるんだ
(かばも?
(ああ、もちろん
(かばじゃなくても
それは
ハンモックの淡い陰を揺らす
麦風の午後だ
あるいは
黄色い花で編みこまれた
かんむりの香りだ
ああ!フローレン
戻る 編 削 Point(13)