ひそか ひそやか/木立 悟
 





静けさと静けさ
くりかえす甘噛み
打ち寄せるたび
持ち去られる秘


からだを通る水は痛く
まばたきの奥に声は拙い
手のひらの火
一瞬の重なり


滴が鉱に
鉱が滴に
変わりながら鳴りながら
音の礫を撒いている


階段の一点から
雨を見つめる光があり
遠い言葉を読むように
くちびるのようにまたたいている


窓から火が
内をのぞきこむ
曇の折りめを
ふりかえりながら去る


雪の下を 雪が流れる
その下を 金と緑が流れてゆく
底の底の底の流れが
夜の空を見つめている


明るく浮かぶ
白く火照る
分けられぬものに触れたときの
淡いただよい


雨の地を 火と光が歩いてゆく
踏みしめるたび静けさは散り
くちびると笑みのはざまに
新たな秘が生まれ来る


















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