怒りの昼寝/百瀬朝子
 
いつかの涎(よだれ)のあとが
シーツの上で
かぴかぴに乾いて
こべりついていたり
枕元には
幾日分もの抜け毛が張り付き
昼寝の
心地よい気分を害す

絨毯の上
置き忘れられたほこり取り
ころころするローラーを
汚いシーツの上で転がした
いったりきたり
いったりきたり
でたらめな往復で
僕の心は飽き飽きする
繰り返すうちに
粘着性を失って
僕の執着心はそぎ落とされ
役目を果たしたローラーの
シールをはがして
ゴミ箱に
放り投げたが
枠に嫌われ
余計な仕事を増やしたので
怒(いか)った僕は
絨毯に火をつけて
そのまま昼寝をすることに
決めました

めらめらと
おやすみなさい
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