土偶/たりぽん(大理 奔)
 
海から流れてくる雲を
ぼんやりとながめていると
失われた呪文を思い出します
焼き締めた土人形を
たたき割るときに
病んだひとの名を呟く
あの、呪文

  鳥取の冬空は
  ほんとうの空気のように
  透明です
  地図がもっと小さくて
  世界に果てがあると
  信じられてた頃の
  遠い空です

砕いてしまいたい土人形が
いくつもあります
わたしを焼き締めて
たたき割り
何でも知ったつもりのあいつらの名を
誰も知らない呪文にして

  滝を抱く森の深くから
  あおくさい霧が流れ出します
  そらでは稲光が不機嫌で
  呪文が成就されるまで

果てがありますように、
そして見知らぬ世界を
許してくださいと



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