傷/石畑由紀子
 
私の右頬には
すぅっと一本の線があります

おさないころ
北海道でも有数の豪雪地帯に住んでいたころ
いつものように、母は
空とも陸ともつかない厄介な白と闘っていました、必須アイテムは
鉄スコップ
降り積もった白に突き刺してはすくい
すくっては放り投げ
を黙々とくりかえす母、の
三歳の娘は、いつもそばにいたかったのです
そして
母の背中はそれに気づかなかった、すくっては/放り投げ、/の
その瞬間に
鉄スコップの切っ先/は
三歳の娘の右頬をガツンッ と
氷の冷たさで殴ったのでした、あとは、倒れうずくまり泣き叫ぶ、娘、みるみる青く、腫れあがる?と一緒
に青ざめて叫ぶ、
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