月模しブランディ/宵色
恋の終わりを見たのです
傷ついた牝鹿が打ち震え 月夜のインディゴブルーにか弱い叫びが木霊しました
私は牝鹿の隣で 飲めもしないブランディが琥珀にたゆたって月を模し 星空の端でぽっかりと暗い闇に流れ落ちてゆくのを見つめていました
本を持つ私はしたたかに牝鹿の叫びに震えた手で、幕を下ろした恋を不意にブランディにとけ込ませるのです
沈下して、とろてゆく様は唯の痛みでしかなく
よろけた女神の足下で 隠した涙を私は香しい衣で拭うのでした
なんて切ない夜!
それでも酒好きの貴方は知らず琥珀のブランディを飲み干して、溶けて無くなった恋を絶妙な味だと褒めるのだわ!
私の素晴らしき色彩 灰色の中の薔薇の肖像
今宵は沈む黒い眼
捧げるものは、美しい緑の枝の絵筆だけ
気まぐれな猫に運ばせて
(慰めという惨めなものではなく、寧ろそれは同じ悲しみであった)
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