僕の道程/doon
 

 行きなさい
 母親は決して言わないけれど
 そういって僕らを産み落としてきたんだ

 父と母の歩いた道はとても歩きやすく
 踏み固められていたのは
 同じように生きていて欲しいから
 精一杯の人生を歩んだのだ

 そう、僕らにも先がなくなることがある
 知らない場所へ
 知らない道へ

 僕は一人の人を愛することができる
 一人の子供がやってくる
 産む苦労を知る女性には分からないだろう
 この子が本当に僕の子か
 僕にはディーエヌエー鑑定されても分からないかもしれない

 でも分かることがある
 この子は僕を見て笑ったんだ
 ホッソリとした目で
 笑ってくれたんだ

 父と母の背中を見て生きてきた僕には分かる
 この子が今見なければいけないものは
 僕の背中であることも
 歩き方は分からない
 この時代の生き方なんて
 戦後の人には絶対わからない
 
 だけど僕は生きていかなければならない
 この子の道程となる
 これから先の道のりをずっと……


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