そこにもう生温かい宿命の感触は無いとしても/ホロウ・シカエルボク
 





深く奥底に沈んだ
牙の先端を探して
いくつもの時間の粒が
真夜中の闇の隔たりに消えた


愛の音がしていた
夢の音がしていた
晴れの日の
花の匂いがした
やわらかな
やわらかな感触
深く沈みこむとき
それらはすべて嘘になる


俺は漂流、羅針盤を捨てて
あてもない土地こそが
行き着くべきところだと信じてから
誰に手紙を出すこともない
居ないことにしてくれ
居ないことにして
俺はどこにも
俺はどこにも


牙の先端のことをしばらく眺めていない
今でも貫けるような
そんな尖りだと信じ
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