彼奴とガリンシャ/松本 卓也
 
ここに詩人を名乗る者が居るとしよう
いや、言葉により自らを詩人と定義してなくとも
心中において自ら詩人たりえると自覚している者が居るとしよう

彼奴が自ら詩人足りえるためにとる手段といえば
一つに自己以外の自称詩人達を篭絡する美しく軽々しい言葉を操り
一つに詩論として偏った死生観宗教観人生論政治思想を弄ぶ

何一つ反映される事のない磨きあがった水鏡には
現実泡沫にありえない完成された妄想が綴られ
誰しもの享楽的な失禁の如き賞賛を浴びせている先で
彼奴は自らの詩風に恍惚を覚えているのだ

昔、ガリンシャと呼ばれたブラジルのサッカープレイヤーが居た
小児麻痺をわずらい左右の
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