欲する/百瀬朝子
 
目の前に開く闇
閉ざされた心に 甘い蜜を差したなら
その甘さに酔いしれて
知らず知らず
口をあける
もっともっと
神経が騒ぎ出して
心は欲望のままに
前も後ろも忘れて憐れ
醜い動物よ
おまえはその盲目さで光は見えるのか

かつての願いは泡となって消えた
しゃぼん玉が宇宙に行けないのと同じくして
泡となれば はじけて消えるだけ

はじけた泡が目に飛び込んで
白目が真っ赤に色づいて
真っ赤な涙が流れたら
その美しさに心奪われ
知らず知らず
口をあける
舌ですくって味わえば世界が終わる
世界が終わればあたしはひとり
新たな願いを胸に抱く
太陽の光に包まれるころ成就する
喝采と野次に包まれ恍惚に堕ちればあたしは終焉
開いた闇は閉じてゆく
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