そういうこと/結城 森士
佐伯くんという幼なじみの友人がいた
運動神経が学年で一番良くきかん気な子だった
彼と僕の家は近くて、昔から一緒に帰ることが多かった
彼の家は柳川通りの十字路に面した貧しいアパートの二階
横断歩道をわたってすぐに彼は階段を駆け上がり
僕は小道に入り、柳川通りを走って突っ切る
すると、ちょうど二階で佐伯くんが家に入るタイミングに
小道から、佐伯くんの後ろ姿を見ることが出来る
ここで僕が手を振って挨拶をする
佐伯くんも振り返り、それに答える
これが僕と佐伯くんの間だけで行われる、2人だけの儀式だった
小学校の一年生の時から中学校の三年生まで
僕らはこのお互いの約束を守り続けた
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