「 蛇。 」/PULL.
 
めらかにもぐり込んだ男がわたしの中の月を突き上げる、やがて冷たいものがわたしの中で弾ける、なまあたたかいものが月に、かかる。

 男が来るのはいつも夜だがここの外が本当に夜なのかわたしには解らない。男はわたしをここから出そうとしないのでわたしはわたしのからだに訊いてみるしかないがわたしのからだの中はいつも夜なのでやはりわたしは解らないでも、男の来ない間は昼で男が来るのは夜だと思うことにしている、何故なら男は必ず夕食を持って現れるからだ、夕食は男の食べるものと同じなのでわたしにはいつも少し物足りないがそれを男に言ったことはない、男は傷付きやすい存在で父もそうだったと母が言ったからだ、わたしは母の
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