メメント・モリ/セシル
冷め切った紅茶を飲み下す
視線の先には透き通った闇夜があるばかりで
僕は少し目を伏せ 俯いた
自分の足音ばかりが響くような午前三時
気まぐれに触れたアスファルトが温かかった
街灯の下 何かが揺らぐよ
それは僕の気持ちだったのかな
この世界の実在だったのかな
真一文字に皮膚を切り裂けば
青い青い空があふれたらいいと思った
そういう美しいものが僕の中に住んでいたらいいと
ずっと願っていたんだ
耳鳴りみたいに響く誰かの声
この目は暗闇を映しなお暗く なお深く
誰も行ったことのない場所へ憧れている
死を恐れることなかれ。
死を恐れることなかれ。
死を恐れることなかれ。
だけどそんなの無理に決まっているとわかってもいるよ
本当は明るい 日なたの世界を愛している
焦がれるほどにこの手を伸ばしている
死を恐れることなかれ。
響く声はいつか僕を暗渠へと突き落とすだろうか
いつか走り出した先に痛いほど眩しい光が射して
僕の目を 潤している
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