記憶に巣食う鬼/小野カオル
 
らの寄り添う姿に私は強烈に反応したのだ。こう思い出していると、

 ジツノカゾク、という言葉が頭に浮かんだ。

娘たちは、血のつながりではなく信仰のつながりを選んだ。若さ故だろうか。彼女たちにとってのジツノカゾク−本当の家族−はこのとき、心が結ばれた他人だった。

 彼女たちの求めていたものが幻のようなものであったとしても、それを求める切実さは否定できない。輪の中に座り込んで手で顔を隠している鬼、彼女たちもそんな自分の姿を見たことがあるのかもしれない。おそらく彼女たちは、その鬼を信仰の光によって救おうとした。そして私が記憶の彼方に押し込んでいるのも、その鬼なのだろうか。懐かしい、心の底に棲む小さな鬼は、いつでもジツノカゾクを恋しがっている。


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