「 地底の水曜日。 」/PULL.
質がある、わたしは穴の周りを硬くしながらじりじりと掘り進む、しばらくするとひとの手が及んだことのない、処女土に出る、それは爪の先から伝わる土の感触で解る、わたしはこの瞬間が好きだ、わたしが地底に潜ることの意味を、わたしが地底に還ることの意味を教えてくれる瞬間だからだ、ここの土は赤い、掘れば掘り進むほどに赤くなり、血の色になる、それはわたしの祖先が地底に潜る前に沢山のわたしたちの祖先を殺し、地上を血で染めたからだ、その光景を見た祖先は自らの爪で自らの眼を潰し、地底に潜った、わたしたちはその子孫で、わたしもそのひとりだ。
赤い土を掘り進む。理由も解らない涙を流しながら赤い土を掘り進む、やがて硬い、
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