『思い出すこと』/にゃんこちゃん
 
あなたが好きで、歌ってくれた
よく歌ってくれた。

録音して、僕に
歌わせようとまでした
その歌を、今聴いている

僕の体のなかで
あなたが、腕を広げるよ

その歌を聴くと
あなたが小さな頃は
どんな娘だったのか
眼を瞑って、遠く思いをはせる

少女のあなたが、精一杯に
細い腕を広げて
向かってくる

まるで
いつも繰り返されている
誕生と生の終わりのように

あなたは
僕が抱えているものを
確かめにやってくる

どうやら
僕は父親のようだね

波に追いかけられて
むしゃぶりつくように
戻ってくる

今にも泣き出さんばかりに

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