無味/ヨルノテガム
わと彼は言った、その彼を思い出せないわを
ぼんやり、オレンジの飴玉が朝の目線の太陽だったなんて。
始まりのようでとても苦しい、それ、これ。
こんなの続けてらんない、と
水が女に浸かる、聞き間違いと気ちがいの語呂は似ていますわねと、
裸の女の入浴を想う尻は揺れるがそれは女肌のスーツを着込んだ
別の生きものに思える、せめてヒョウだとかチーターとか淡雪が
中に仕組まれていなくては、もう何だか水音にしか癒されなくなり
女へ伸ばした指先がひどく冷たい入浴水であることに驚き、惑い、
ためらいそれでも魔術は始まるわけだが熱い、熱いのは、チャチャ、
浴槽から立ちのぼった尻を高音のレの音で打ちのめす
女はミを叫ぶ
戻る 編 削 Point(3)