甘く温かいミルク/ホロウ・シカエルボク
君はミルクを温めていた
空白の時間を縫うように
冷えたキッチンをほんの少し
人の心に近づけようとするみたいに
昨日(一昨日かもしれない)、タクシーを盗んで180キロで逃げた男の続報を僕は知りたがっていた
あまりにも
奇妙な事件で
そこには理由というものがなくて、でも、もしかしたら
それには明らかにされる理由がなかっただけの話なのかもしれないけれど
いつしか人は理由を求めなくなる
新しい色も、昨日の色と同じように
宇宙から降ってきた石も
それまでそこにあった石と同じように
君は
温めたミルクで唇を傷め
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