白く。いつかの、いつもの。/ku-mi
 
ポタージュが冷めるのを待てず
やけどする舌
冷たい朝に

湯気の向こうで
陽の光が磨りガラスにはじく
無邪気なほどきらきらと

関東地方の今朝は今年一番の冷え込み
半袖のニットを着たアナウンサーが言う
冷え込んだこの町の6℃は
北国の積もり始めた雪を溶かすというのに

身支度をはじめた私の素足に
小さな電気ストーブの熱と
ストッキングにじゃれる猫の爪
あれは
初めてホワイトイルミネーションを見た年の白い朝
灯油が切れていて
ふたりで凍える思いをすることももう、ない

ゆっくりと
この町の温度とポタージュの温度が
平衡に近づいていく

ストッキングを履き終えて
ひといきにすすったポタージュの残り
やけどした舌はひりひりとまだ
痛むけれど

時間に背中を押され
パンプスをつっかけたまま
玄関を出る

ああ、それでも
息だけは白い

ふと
髪に絡まったような気がした
雪虫
あの日 銀杏の葉音を鳴らして
そっと髪にふれた人の指先を思い出しながら
地下鉄の階段を下っていく
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