過ちに会える街/セルフレーム
 
高く、すらりとした男性が駆け寄る。

―父の、若い、姿、スガタ、


―思い、出した。



東京都、神奈川県寄りの一番端の街。

―蝶過町。

僕は4歳半まで此処で過ごした。
兄は7歳まで此処で過ごした。

そこまでしか、思い出せなかった。


目が覚めたとき、ビルの中を走る電車の椅子の上だった。

ポケットには、兄、僕、父、母の色褪せた写真が握られていた。


調べてみたら、あの後、蝶過はダムに沈んでしまったという。

白昼夢にしては出来すぎている。
精巧に作られた幻、という事にでもしておこうかな。


明日からまた、生真面目で優秀な会社員を演じようと思う。


過ちに会える街


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