卵百景/錯春
 
惰と苦痛と笑顔がいっぱい
君が欲しがる身の丈に合った感傷も
あの子がねだった凶暴な接吻も
天国はなんでも揃う

天国は退屈がいっぱい


都会は大きな卵型をしている
その殻を撫でに端に行ってみたいけれど
なんとなく気兼ねして
訪れたことは無い
帰省するとき
東北新幹線に乗りトンネルを10個抜けると
いつの間にか空は再び融合して
土下座したくなるくらい蒼く寝転がった

こたつに入りアンコウ鍋をつつきながら
ニュースに映る都会の空を見る
やっぱり血管が脈打っていて
死なない為に必死で躍動しているようにも思えた

都会の空の中は
冷たくてうら淋しくて
私たちは羽根を濡らした雛鳥
未だに愛を
愛することを知らない
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