ひそやかに/塔野夏子
 
身のまわりの色彩が不思議と淡くなる夜
胸のうちに浮かぶ
いくつかの
花の名

鍵盤をやわらかに歌わせる指たちの幻

夢のうちを
あるいは予感のうちを
あえかにかすめていった 星のようなもの
(ひろがり残るうつくしい波紋……)

忘れられたまま
しずかに揺れる鞦韆(ぶらんこ)

窓硝子に灯るひとつの詩

遠いひとを 想って居るのです




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