迷彩/nonya
 

雨雲がはびこった空へ
僕のねずみ色の狡さが
こっそり飛び去っていくのを
ぼんやり見落としながら
また天気予報がはずれたと
君は唇をとがらせた

ガジュマルの葉っぱに
君の赤毛のしたたかさが
ぎっちりしがみついているのを
やんわり見落としながら
出掛けないほうがいいかもと
僕はTVのリモコンをいじっていた

どうしても言い出せない
砂埃によく似た言葉が
テーブルの上に降り積もるのを
見て見ぬふりで
二人は熱い紅茶をすする
するすると
ずるずると
済し崩されていく毎日を
幸福と呼べないことはない

見破ってはいけない擬態を
すんなり避けながら

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