巡礼、訊ねることもなく/たりぽん(大理 奔)
 
空を殺した鉛色が
凍える水面を
錆びた銅鏡に

そんな遅い朝
鳥たちは巡礼に訪れ
しきりに頭を下げる
もう幾度も焦がれては
言い出せずのどを鳴らし
奥歯をかみしめる

本当に辛いときにだけ
あなたを夢見るのは私の、
わたしだけでないぼんやりとした
みけんやこめかみを
掴む指先のように
繰り返される
何百年もの巡礼
何千年もの巡礼

(この巡礼はちっぽけだけど
 私だけが繰り返すことのできる
 轍がある )

胸をとらえた面影が
磨かれた窓を横切る
残酷な朝、日々白くなって
かたくひび割れた指先で
手帳に刻む轍
命かけて飛び立てないわたしを
あざわらう巡礼者よ

北の空へ帰れ!



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