月光/たもつ
綱わたりをしていると
月がきれいだったので
僕はまっさかさまに落ちていった
形の良い吉川くんがそれを見ていて
僕らはレンガ遊びを続けた
吉川くんはレンガをちゃんと地面に積んで
その様子が少しうらやましかった
僕には何もない
地面も良い形も
このまま落ちていくとどうなるんだろうね
と聞くと
壊れちゃうかもしれないね
吉川くんはこっちを見ないでそう言ったけれど
僕のために泣いてくれた人は
吉川くんが初めてだった
壊れちゃうかもしれないね
落ちる、ということは
多分そういうことだ
僕はふわりと着地して
吉川くんのお通夜に出かけた
戻る 編 削 Point(25)