黄身/カンチェルスキス
俺はグレープフルーツジュースを
飲み干す。
頭上の空に半分の月が
まぬけに浮かび上がっていて
横を振り向くと
夕日が海に沈もうとしていた。
グレープフルーツジュース。
半分の月。
夕日。
鋭い二等辺三角形。
俺は満足した。
駅を越えた。いつもの交差点だった。
信号を待った。
向かいの居酒屋の二階席の窓
女が働いてるのが見えた。
宴会客の箸をテーブルに並べていた。
並べ終えると、小さく頷きながら
何度も指で数を確認した。
その下を、スーパーの袋を左手に下げた
老婆が歩いてきて
居酒屋
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