車輪/ヨルノテガム
そのレースで彼は亡くなった
何かいつもと変わった規則をひとり、
実行しているかのように
静かなポツネンとした顔見せの並びであった
前のレースまではきれいな三分戦が続いていた
運命の支配から逃れるように いや
自らでそれをこじ開けようとしていたのか
彼は有力な捲り選手の三番手を嫌がり、単騎で前々を選ぶ
誰もが後々、何故だ、
何故お前は単騎で自転車を漕いだんだ、と
その姿を恨めし、僅かな死の入り口を覗いてしまったのを憎んだ
人知の域を越えた
事故という一点の隙間から振り返る
巻き戻しばかりの人の思惑。―――
二車で挑む捲り選手の予想外の逃げ。誤算。焦
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