ナイフ/ホロウ・シカエルボク
 




吐こうとした言葉はすべて懐に隠して、手元で何度となく弄んできたようなものばかりを並べて、それを予防線と呼ぶことにしてなんだか満足した、申し訳なさを匂わせるみたいに段階的に光度を落としてゆく寒々しい世界は、叶うことよりは叶わないことを受け入れて生きるべきなのだと決意しているようで、それは部屋の中から傍観する分にはやたらといらつきを募らせる種類の静粛だった、先ごろ販売が中止されたナイフを手に取って私は爪を研いでいた―いつからそんな風にしていたのかは今では思い出せない、私の父はナイフが好きだった、彼の書斎の引き出しには数えきれないほどのナイフがずらりと向きを並べていて、刃を覆い隠す黒や茶
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