夏の朝、午前5時半、/佐々宝砂
いつもあのひとのことを考えているわけではないから
たまには大目に見てやってほしい
外は爽やかに水色の夏の朝
汗で酸っぱいTシャツを脱ぎ捨てて窓辺に立っても
田舎の農道に車一台通るでもなく
ただクマゼミがシャンシャンと鳴くばかりで
焦燥感をどこにぶつけたらいいのか見当もつかないけど
だからといって私は死んだりしないのである
ため息つきつつ虫さされに塗る抗ヒスタミンクリームに
R−メントールがほんのひとたらしも含まれていないこと
友だちから来たメールに返事しなくちゃしなくちゃと思ってて
でも優しい言葉はかけられないから必死にジョークを考えていること
近所の野良猫のふくれ
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