空の時間、断筆まがいと全容/れつら
に。偉大な何か。美しい何か。価値ある何か。やめだやめだ。空のために書くな。空を書け。わたしがわたしを証明するための文言ならば、これから先幾重にも重ねねばならない。運転免許証、学位、職務履歴書、源泉徴収、煙草ひとつ買うにも問われる、わたしはなにものであるか?馬鹿馬鹿しい。僕は甘んじてきた。その時間こそが僕だ。それを誰よりも僕は認めよう。このときに馬鹿馬鹿しさの質は立ち代わる。僕はグリッドに制約されない。切り分けられたフレームの中に収まるのは僕の部分だ。たとえそれが全体であったとしても、さしたる問題ではない。たまたまグリッドが僕より大きかっただけの話だ。空に浮かぶ鳥の姿を収める写真は、鳥の目の輝きを見ない。単にサイズの問題だ。距離感の問題だ。位相よ死ね。馬鹿馬鹿しい。苛立つな、その必要はない。僕はあらかじめ空である。そのために充分な時間は費やした。今こそはっきりと言おう、誰にも認められる必要はない。だから、認められにいこう。もう充分だ。
空のために書くな。空を書け。
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